文部科学省補助事業 ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業

筑波大学・東京医科歯科大学

文部科学省補助事業 ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業

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令和6年度 第5回総合診療塾(テーマ:重症患者さんや家族とのコミュニケーション)を開催しました!

令和6年9月3日に第5回総合診療塾「重症患者さんや家族とのコミュニケーション」を実施しました。

昨年度も開催したこちらのコース(令和5年度 総合診療塾特別回(テーマ:重症患者さんやその家族との効果的なコミュニケーション)を開催しました! | ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業 (tsukuba-tdmu.jp))の続きの第2回となるコースで、今年度もオレゴン健康科学大学家庭医療科 大西恵理子 先生 に講師としてお越しいただき、どのようにして患者、家族の価値観を引き出していくかという内容をテーマとして扱いました。また、ゲストとして、シアトルで臨床や教育をされているLindsay Gibbon先生にもお越しいただき、オンライン+現地のハイブリッドという形で開催しました。当日は学生から専門医まで多くの方にご参加いただき、活発な議論が行われました。

以下、医師役として模擬患者さんとロールプレイをして下さった総合診療科専攻医の中田里菜子先生の感想です。

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前半戦は患者さんやその家族とコミュニケーションをとる際のスキルとして、NURSEスキル(感情に対応するスキルとして、Name, Understand, Respect, Support, Exposeの頭文字をとったもの)などの概要を学び、大西先生を患者役として参加者が順に対話を実践しました。後半戦は模擬患者家族役の方と医師でICを行うロールプレイを行いました。

私自身、日々臨床の現場で患者さんと向き合ってはおりますが、患者さんの感情に寄り添い、対応するという時間はあまりとれているとは言えません。今回の講義を通じて、実際にどのような感情をお持ちかお聞きするだけでなく、相手に敬意を示したり、患者さん自身を支える気持ちや姿勢を示し、そのうえでさらに感情を掘り下げることで、自身の気持ちをより深い部分まで言語化し、さらには医療者も相手をより深く知ることできるということを学びました。

また、今回のご講演の後半戦のロールプレイにおいて、私は医師役を務めさせていただきました。場面設定としては重症患者のご家族とのICなのですが、患者さんと医師とでは考えの土台が全く異なるということを強く身に染みて感じることができる機会となりました。
重症かつ予後が厳しいことが予想される場合、医師としてはいかに現在の状況が危機的で、厳しい状況であるかをお伝えすることで、これ以上の治療がむしろご本人にとって苦しい時間を増やしてしまう、効果のない治療であり、やらないという選択肢の重要性がわかってもらえると思っていました。しかしながら、患者さんご家族は、今回の設定の場合はとりわけ予想し得なかった急変という状況でもあったので尚更に、いくら「説明」を聞いても到底納得できないものでした。

そこで、今回学んだNURSEスキルを活用し、患者さんのご家族が抱える感情に目を向けることで、実はご家族は患者さん自身をとても大事にしており、守らなくてはいけないと感じていた感情があることを知ることができ、更には今まで大切にしてもらっていたのに恩返しできていなかったという後悔の念があることも掘り下げることができました。
ロールプレイは部分的でICのすべてではありませんが、感情に目を向けることの重要性や、理屈と感情を分け、会話の主軸がすれ違いになることがないよう気を付けなければならないことを学ぶことができました。

短い時間ではありましたが、密度の濃い内容を伺うことができ、とても貴重な機会となりました。
この度はお忙しい中、ご講演頂き誠にありがとうございました。

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次回、第6回総合診療塾は「めまい」について扱います。

意外と多い主訴であるめまい、ポイントをしぼって自信をもって鑑別診断できるようになりましょう。

ぜひご参加ください。

日 時 : 令和 6 年 11 月 11 日(月)18:00~19:30

テーマ : 臨床推論の基本的な考え方(めまい編)

講 師 : 筑波大学 木村 紀志 先生

詳細、申し込みはこちら → https://tsukuba-soshin-r6-06.peatix.com