文部科学省補助事業 ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業

筑波大学・東京化学大学

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令和5年度 第3回総合診療塾(テーマ:患者中心の医療の方法)を開催しました!

先日、第3回総合診療塾を開催しました。

第3回総合診療塾のテーマは、「患者中心の医療方法」

「病院の先生は、話を聞いてくれない」

「病院の先生は、薬を出してくれない」

など、患者の不満の声を聞いたことはありませんか。

しかし、医師はきちんとした正しい診療をしているはずです。

どうして、このような医師と患者の間にすれ違いが起きてしますのでしょうか。

患者が本当に満足する診療をするためには、医師の診断する「疾患」のみならず、患者自身が認識する「病い」を見出し、共にアプローチする必要があります。この概念のことを「患者中心の医療」と言います。

今回は、筑波大学附属病院 総合診療科 任明夏先生 が講師となり、本当に必要な「医療」を考え、「患者中心の医療」を実践するためのスキルを学びました。

受講した学生さん2名から感想をいただいております。

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【①埼玉医科大学医学部医学科6年 井上 勇さん】

第3回の「総合診療塾」では、任明夏先生から「患者中心の医療の方法」の4つのコンポーネントのうちの1つ目である「探索」に焦点を当てたレクチャーをしていただきました。学生達が実際に医師役、患者役を演じることを通じて、患者さんの背景を探索するコミュニケーションの切り口である「かきかえ」について学ぶという内容でした。私は医師役を務め、1回目の医療面接では検査結果を患者さんにわかりやすいように伝えようとしましたが、それは患者さんが真に望んでいることではないということに気づくまで時間を使ってしまい、結局患者さんの背景を探索する時間がなくなってしまいました。

そうして1回目のグループワークを終え、

・医師と患者のコミュニケーションのずれ

・診察や検査の結果に立脚した医学と,患者さんの安心に重きを置く医療の違い

・一人一人の患者さんには背景があるということ

についてのレクチャーをしていただきました。

医師は医学的側面から異常がないため治療の必要はないということを伝える一方、患者さんとしては真に困っている病いのエピソードと不安について話を聞いてほしい、という構造を解説していただき、医療者から患者さんの背景を探索する切り口である「かきかえ」について教えていただきました。

「かきかえ」とは以下のようなものです。

2回目の医療面接ではこれらを念頭に置き、1回目よりは患者さんの背景に思いを巡らせることができたのではないかと思います。しかし、そこではまた次の課題が挙がり...

今回自分が得た学びとしては、解決に繋げる情報の伝え方についてです。グループワークの中で、ストレスが原因の一つと考えられるということを伝えると、患者さんは見放された気持ちになるのではないかという意見をもらいました。確かに、今まで症状に苦しみ、辛い検査まで受けた挙句ストレスと結論づけられると許容し難いと思います。そこで、それを解決に繋げるためには、その患者さんの具体的なストレスの原因について一つ一つ解体して一緒に考えることまでをセットにする必要があると感じました。その過程でその人の心理社会的な側面や病いのエピソードに対話を通じて触れることで、医療や介護サービスの導入につながり、真のアウトカムである症状の改善に到達するのではないかと思います。

最後に、私は現在6年生で国家試験の勉強に追われていますが、問題に出てくる患者さんの背景は職業やストレッサーの存在が書いてあるのみであり、一人一人の患者さんの背景まで十分に考えが至らなくなっていることを痛感しました。来年には研修医の予定ですが、今回学んだことを忘れず傾聴と共感の研鑽を積み、患者さんの真に欲しているものを身紛わない、その人に伴走できる医療者を目指したいと思っております。

【②東京医科歯科大学医学部医学科3年 井澤 智優さん】

第3回の総合診療塾のテーマは「患者中心の医療の方法」で、患者が本当に必要とする医療と、それを実践するための具体的な方法について学びました。 

まずは、腹痛のある患者の症例が提示され、医師役1名、患者役1名、観察者役2名の4名でロールプレイを行いました。そこで、医師役は患者役に、検査では異常が発見されなかったので病気はないと告げ、患者役は、明らかに自覚症状があるので異常があるはずだ、どうして見つけられないのか、ほかの検査をして欲しいなどと答え、医師と患者の病気の見方、捕らえ方には、大きなずれがあることが認識できました。

次に、このずれを埋めるための実践方法として、「かきかえ」というコミュニケーションスキルを学びました。「かきかえ」とは、患者の考えていることを整理してうまく聞くためのコミュニケーションスキルであり、解釈(自分の病気への解釈)、希望(医療者への希望)、感情(病気についての感情)、影響(生活への影響)の頭文字をとったものです。

そして、このスキルを用いて、2回目のロールプレイが行われました。実際の医療現場では個々の患者にここまで時間を割いて詳しい話ができるのかとか、生活の詳細なことにまで医師が介入できるのかなどの疑問は残りましたが、一回目に比べて、医師と患者とのずれはかなり埋められたように感じました。

「医学」は科学であり診察や検査の結果から説明できるものを指します。一方、「医療」には、科学では説明できないものや検査では測れないものも含まれます。実際医学の進歩が医療の質を向上させてはいるものの、医療の現場では、医学以外のものも重要性を増しているように思います。

今後の医療には、目の前の患者さんだけではなく、その後ろにあるものまで配慮し、共感と傾聴で少しずつ丁寧に拾っていくことが大切であり、総合診療医は必要に応じて他の医療専門家や医療従事者とも連携し、患者のケアを調整する必要性を実感しました。

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第4回 総合診療塾は、

日 時 : 9 月 1 日(金)18:00~19:30

テーマ : ヘルスプロモーション

講 師 : 筑波大学附属病院 総合診療科 阪本 直人医師

詳細、申し込みはこちらをご覧ください https://tsukuba-soshin4.peatix.com