文部科学省補助事業 ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業

筑波大学・東京医科歯科大学

文部科学省補助事業 ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業

筑波大学・東京医科歯科大学

令和5年度 第1回総合診療塾(テーマ:緩和ケア)を開催しました!

新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、地域における医療体制の見直しや医師の地域偏在及び診療科偏在を解消する重要性が再認識されてきています。現在の医学教育は、おもに臓器別・診療科別の枠組みで構成されており、教育内容も疾患論が中心となっている中、医療資源が十分ではなく、すべての診療科が揃っているわけではない地域医療の現場で求められるのは、医療のさまざまなニーズに対して、臨機応変に応えられる「オールラウンダー」の医師です。
そこで、筑波大学総合診療科は、総合診療・家庭医療の実践に必要な概念を学ぶプログラムとして、今年も「総合診療塾」を開講することとしました。

第1回総合診療塾のテーマは「緩和ケア」

筑波大学附属病院 緩和支持治療科 東端孝博医師と西川英里医師が講師となり、

生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者さんに対し、医療者として何ができるのか?

残念ながら回復の見込みがない状況でどのように苦痛を評価し、どのようなケアができるのか、を参加者とともに考える時間となりました。

そこに参加された学生さんに感想をお聞きしました。

——————————————————–

第一回総合診療塾のテーマは緩和ケアで、患者さんの回復の見込みがない時、どのようなケアができるか、また自分の志す分野がどのように緩和ケアと関わっているかを考えることが目標でした。

まず、講師の西川先生からレクチャーがありました。

緩和ケアとは疾患による問題を抱える患者、その家族に対し、身体的、心理社会的、スピリチュアルな問題を発見し対処することで、QOLを改善するアプローチと定義されます。患者さんはそれぞれの生活において、ライフステージを歩みながら様々な気持ちを抱えて闘病しています。これを考慮し、病気が分かった時から亡くなる時まで常に心理的なケアが必要となります。患者さんを生活も含めてまるごと、ずっと診るというプライマリケアの理念は、緩和ケアの理念と親和性が高いと言えます。

苦痛をどう評価するかにおいて、体に傷があるかどうかは大切ではありません。精神的、社会的、またスピリチュアルな要素が大きく関わってきます。特にスピリチュアルペインとは、自分が大切にしているもの、生きがい、人生観、価値観と言えるものが損害されるときに生じる痛みです。

全人的苦痛を評価するには、患者さんをよく理解し、病状や予後の理解が現実に即しているかを本人の言葉で語ってもらう必要があります。

その後、東端先生から具体的なケースの紹介を受け、参加者全員で2グループに分かれてディスカッションを行いました。シナリオは、乳がんのstageⅢAの診断を受けた秋子さんが、どのような苦痛を抱えているか想像するというものでした。

最後にそれぞれのグループが話し合いの結果を共有し、先生方からコメントをいただきました。

私の中で今回、最も大きな学びとなったのは、スピリチュアルペインについてです。私は今回のレクチャーでこも言葉を初めて知り、またディスカッションの中で、グループメンバーの想像力に驚かされました。スピリチュアルペインは、医療者に対して相談しにくい悩みだと思います。だからこそ、私たちにとって、多様な悩みの可能性を幅広く想像し、その苦しみが和らぐアプローチを考えることは非常に大切になると考えます。(筑波大学医学群医学類2年 結城舞さん)

——————————————————–

第2回 総合診療塾は、

日 時 : 6月22日(木)18:00~19:30

テーマ : 臨床推論の基本的な考え方

講 師 : 筑波大学附属病院 副病院長/総合診療科長 前野哲博医師

詳細、申し込みはこちらをご覧ください  https://tsukuba-soshin2.peatix.com/view