文部科学省補助事業 ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業

筑波大学・東京医科歯科大学

文部科学省補助事業 ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業

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令和5年度 災害時初動とBCP学修プログラム・コース 災害医療とBCP入門(4年次)レポート

災害時初動とBCP学修プログラムでは、筑波大学医学類4年次を対象に、アドヴァンストコース『災害医療とBCP入門』という1日限定コースを開講いたしました。

<学修目標>

① 災害の定義を理解し、救急医療と災害医療の違いを説明できるようになること。

② 多数傷病者発生時の適切なトリアージができるようになること。

③ Business Continuity Planの概念を理解し、Business Impact Analysisにより災害発災時72時間の診療継続性を考慮できるようになること。

<学修内容>

1時限  講義『災害医療総論』

2時限  講義『BCP総論』

昼    非常食の調理と試食

3時限  机上演習『BCP机上シミュレーション』

4時限  チームトライアル『トリアージ訓練』

5時限  院内散策『筑波大学附属病院における災害対策』

受講した学生から感想をいただいております。

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災害では、医療の需要を医療資源が圧倒的に上回る。そのときに医療資源を適切に分配できるような医療を提供することが重要だと学んだ。

災害は広くは感染症やテロなども含む。COVID19感染症の流行もその一つと言える。

パンデミックなどの災害が起きたときに医療者がどうしていくべきなのか学習することができてとてもよい機会となった。

また、BCPという概念を初めて学んだ。BCPとは、災害発生時に最低限病院機能を維持していくにはどうしていくべきか、その計画のことだが、これの立案について水の供給の立場から学んだ。

今回のコースでは、災害のことを学んだが優先順位をつけることは平時の医療においても重要なことと言えよう。たとえば、夜中の救急外来などでは医療資源が限られているがその中で多くの患者さんを診療せねばならない。この場合には、優先度を決める必要も出てくる。

災害医療での経験は平時の医療にもいかせると思う。資源を有効に分配するという視点を持った医師になりたい。また、BCPを立案するときに平時の水使用量を学んだ。災害時の想定を通して平時でも節約できる資源はないか、資源の分配を有効に行うのには、どうしたらよいか考えていくことも肝要だと感じた。

(筑波大学医学類4年 三瓶直人さん)

実際の実習の様子はこちら

講義
無線機器の練習
非常食の調理
非常食の試食

トリアージ練習①
トリアージ練習②
ヘリポートにて

他の学生のレポートから、「想定外の災害とならないようにするには、どのような準備が必要か」の意見を抜粋したものです。

・すでに起きた大きな災害をもとにして防災計画を立てる。また、定期的に防災計画を検討し、より良いものにしていくことが大事。

・経験したことのある一番大きな災害を、2倍程度の規模で起こった場合を考えておく。人類が未体験の災害が起こってしまった場合でもある程度同じように対処できるような計画を立てておくことも大事だとコロナで思い知らされた。

・どのような損失が起こりうるかを予め想定し、起こりうる事態に備えることが必要だと思う。有事の際に機能を維持するため、平時からBCPを策定したり、それに基づいて訓練をしていくべき。

・想定外の災害となる要因は自然災害に対する知識不足、災害となりうる要因(マス・ギャザリング等)のリスク評価及び防災が不十分など、災害に対する想像や思考が不足することに伴うものが挙げられる。よって、想定外の災害とならないようにするには、想像力を働かせ、事前に準備を行う必要がある。具体例として以下が挙げられる。

まず、BCP策定及び定期的な見直しである。災害は時や環境、情勢などによって変容するため、繰り返し見直しを行い、試行錯誤することが必要である。

次に、多学問領域との連携である。災害に関する自然災害科学や防災学、防災のためのまちづくりにかかわる交通工学や土木工学、また情報工学、栄養学など様々な学問の知識を融合して、災害対策を行うことが求められると考えられる。また、災害後に浮き彫りになった課題及び学びを、技術開発等の形で社会に還元するためには、連携が必要不可欠である。

最後に、市民に対する災害のリスク及び対処方法の啓発である。有事の際に人々がとるべき行動を積極的に発信し、(適宜教室を開催し、)各々の知恵を底上げすることは、減災につながると考えられる。

全体を通し、想定外に災害とならないようにするには、「想像力を働かせて考え続ける」ということが重要である。