サイトビジットレポート⑬(市立恵那病院)
2月 3 日(月)筑波大学医学医療系 小曽根 早知子先生が岐阜県にある市立恵那病院に視察に行かれました。
1.視察目的
総合診療医には基本的なウィメンズヘルス診療を提供できることが求められるが、その資質・能力を獲得するための研修を提供している施設は全国でも限られている。市立恵那病院は、総合診療・家庭医療分野の専攻医へのウィメンズヘルス研修を提供している数少ない施設である。自施設での卒前及び卒後研修での総合診療分野におけるウィメンズヘルス教育に役立てることを目的に視察を行った。
2.視察施設名
市立恵那病院(岐阜県恵那市大井町2725)
3.視察内容
・市立恵那病院の産婦人科
市立恵那病院は地域医療振興協会に属する、病床数199床の二次救急病院である。市内で唯一分娩を行える医療機関であり、恵那市および近隣市のハイリスクではない分娩を年間400件弱扱っている。常勤の産婦人科医が複数在籍している。特に週末を中心として近隣の大学病院や地域医療振興協会の病院の医師などが当直業務を行うという。地域医療振興協会の総合診療科専攻医をはじめとする多くの総合診療科専攻医に、3か月単位のウィメンズヘルス研修を提供している。新たに産婦人科を専門として学びたい医師の受け入れも行っている。
・産婦人科外来
産婦人科外来では、午前中に産科外来、婦人科外来を並列でそれぞれ行っており、今回は伊藤先生の婦人科外来を見学した。婦人科外来では、月経困難症・子宮筋腫・子宮内膜症・月経前症候群などのある方が定期受診するほか、検診異常・癌のフォローアップ、骨盤内臓脱の診療、腫瘍の精査などの方が受診していた。なお視察日には無かったが、隣の外来ブースにて、専攻医が指導医の下で初診患者の診療を行う日もあるという。
・総合診療科専攻医の短期研修
市立恵那病院産婦人科は、東京北医療センターを含む地域医療のススメ(地域医療振興協会総合診療研修プログラム)所属の専攻医をはじめ、多くの総合診療科専攻医の短期研修を受け入れてきた実績がある。研修のタイミングにより経験できる症例に幅はあるものの、3か月間で専攻医は産婦人科診察(クスコをかけて子宮口を観察する)をはじめ、婦人科外来の初歩的な技能やコモンプロブレムへの対応ができるようになるという(PCOG Competency Ladder 2017 (Ver1.5)のレベル2および3の一部)。日本の総合診療医・家庭医にとって、得られた知識・技能を活用できる場が全国的に限られることが残念ではあるものの、同院での研修後に継続的に知識・技能の維持を目指す者、自ら対象患者を見つけ出す者もいるという。このほか、指導医によるレクチャー、婦人科シミュレーターも用意されている。東京北医療センター専攻医の研修の際には、2₋3か月目に指導医が訪問して研修の振り返りを行い、現地の指導医との意見交換も行っている。なお、専攻医は病院当直や日中の救急担当を一定数担当する。
4.感想
個人的には久しぶりに婦人科外来を見学する機会に恵まれたが、受診する多くの女性が月経困難症・子宮筋腫・内膜症・PMSなどの症状により慢性的に生活に支障をきたし定期通院を要していることや、LEPなどの治療により、全身の様々な症状が安定化することが少なからずあることを再認識した。総合診療医・家庭医としては、Office Gynecologyの基本を少なくとも見たことがあるようになり、仮に自身で産婦人科診療を行わないとしても、必要な診療に積極的に繋げられる姿勢を持つことは必須であると感じた。
市立恵那病院産婦人科では総合診療科専攻医の研修を継続的に受け入れてきた実績があり、総合診療に対する理解も深く、専攻医の興味・関心に合わせた柔軟な研修環境が提供されており、総合診療医がウィメンズヘルスを学ぶ環境としては理想的だと感じた。次年度、自身が所属するプログラムの専攻医が同院にて研修予定であるが、研修中に指導医(レジデントデイ担任など)が現地に赴き振り返りを行い、現地の産婦人科指導医とも情報交換ができると、互いにより良い研修を実現できることになるだろう。
現在自身が所属する総合診療医プログラムでは実地での産婦人科研修は実現できていない。今後、ブロック研修ではなく限られた回数の外来見学形式であっても、総合診療医・家庭医として婦人科慢性疾患への理解を深めることには大きく寄与する可能性があると感じた。今後、自プログラムでも、希望者への産婦人科ブロック研修、および外来研修の実現の可能性を積極的に探っていきたい。
5.添付資料
PCOG Competency Ladder 2017(Ver1.5)
https://www.primarycare-japan.com/files/news/news-1004-1.pdf
