サイトビジットレポート⑪(本輪西ファミリークリニック)
12月 13 日(金)筑波大学医学医療系 久野遥加先生が北海道にある本輪西ファミリークリニックに視察に行かれました。
1.視察目的
本輪西ファミリークリニックは、北海道内に10のステーションを有する家庭医養成プログラムを提供する北海道家庭医療学センターグループに属しており、多くの修了生を輩出してきた全国有数の施設である。北海道の広大な土地柄、病院へのアクセスが十分ではない環境で、地域の限られた資源を生かして外来診療や小児科診療、予防接種、在宅医療を提供しており、ICTを活用した診療体制があり、学生・初期研修医・専攻医教育を行っている。今回は、同院での取り組みを自施設での教育・研修に応用することを目的に視察を行った。
2.視察施設名
本輪西ファミリークリニック(北海道室蘭市港北町1丁目6-3)
3.視察内容
・専攻医教育
本輪西ファミリークリニックは、北海道家庭医療学センターグループが運営しており、教育の中核的拠点として、専攻医やフェロー(専攻医終了後の医師)が中心となって診療を行っている。視察当日の朝7時30分からの専攻医のビデオレビューでは、「慢性期のケア」をテーマに高血圧で通院中の患者さんについて、仕事のことや家族との関係性から健康観や価値観などを深めていくプロセスについて、院長の佐藤 弘太郎先生やフェローの先生方が、専攻医に問いかけながら丁寧に振り返りをしているのが印象的だった。ビデオレビューの評価シートは、患者中心の医療の項目を取り入れており、家庭医療の理論的枠組みについて実践を通して学んでいくことができる良い方法だと感じた。
また、在宅医療の指導体制としては、専攻医が外来のビデオレビューを受け、医療面接や診療のマネージメントのフィードバックを受けた後、基本は1人で訪問診療に行く体制だが、看護師さんが同行することで診療面や家族ケア、連携などのフォローを行っているとのことだった。専攻医1~2年目の在宅医療に慣れていない時期でも、クリニックの看護師が「医師を育てるマインド」をもって関わることで、専攻医は1年でどんどん成長していくという話を聞き、多職種で家庭医を育てることの大切さを感じた。
・看護師との連携
本輪西ファミリークリニックには、常勤医師4名、看護師6名、ソーシャルワーカーが在籍している。師長さんと教育体制や診療で工夫していることを聞いたところ、クリニックの看護師は、存在意義を失いやすいが、「連携」を大事にしており、クリニック看護師が「ハブ」として機能することで、1日20-30件ある訪問看護やケアマネジャーからの連絡を受けたり、体調不良の患者さんの往診の采配などを行っているとのことだった。また、前述の通り、医師を育てるマインドを持ってもらうよう看護師教育を行っており、プライマリ・ケア看護師として質の高い診療を提供していることが印象的だった。採血セットや往診バッグ、点滴などの物品は、看護助手が管理しているとのことであり、グループ診療で誰が対応しても分かりやすい体制が整っていた。
4.感想
室蘭市は湾に面した地形であり、近隣の登別市や伊達市の訪問診療にも対応していることから、16km圏内ではあるものの非常に広い範囲をカバーしている。また、室蘭市内は、山の斜面に住宅が並んでおり、私が訪問診療に同行させてもらったお宅も急な斜面のお宅が多かった。越冬のため、冬だけ施設に入る患者さんもいるとのことだった。そんな中、外来患者さんの体調不良時に迅速に往診などの対応ができるよう、地域包括診療料を活用し、体調悪化が心配される患者さんをあらかじめリストアップしておくという仕組みは、とても良いと感じた。そして、外来を担当しているフェローの先生が、往診などの割り振りをしており、専攻医も臨機応変に往診に行っていた。また、お昼に1時間の診療カンファレンスがあり、前日の訪問した患者さんを医師・看護師で全例共有しており、夜間休日に往診に行く際もスムーズに対応できる、機動力の高い診療体制が整えられいた。関東出身の専攻医の先生は、「北海道が好きで、後期研修後も北海道に残ってフェローをする予定」とお話しており、地域に愛着を持って研修されていることも印象的だった。

