文部科学省補助事業 ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業

筑波大学・東京医科歯科大学

文部科学省補助事業 ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業

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サイトビジットレポート③(絆在宅クリニック)

筑波大学医学医療系地域総合診療医学 久野 遥加先生が東京都東村山市 絆在宅クリニックに視察に行かれました。

1.視察目的

近年、高齢者の増加に伴い在宅ケアのニーズは高まってきており、質の高い在宅ケアを提供する上で在宅療養支援診療所の果たす役割は大きい。今回、東京都東村山市にある絆在宅クリニックの視察を通し、都会の訪問診療や多職種連携への理解を深めて学生教育に生かすとともに、選択CC実習の受け入れの可能性を検討した。

2.視察施設名

絆在宅クリニック(東京都東村山市栄町3-3-2 ナズ久米川レックス1階)

3.視察内容

絆在宅クリニックが今後、選択CCプログラムの実習先として役立てる点としては、都会の訪問診療と多職種連携を学ぶことができることである。

絆在宅クリニックは、機能強化型在宅療養支援診療所であり、約300名の在宅療養患者の訪問診療を行っており、末期癌、神経難病など多彩な症例を経験することができる。院長は筑波大学の卒業生で、筑波大学総合診療グループで専門研修を行った上田篤医師であり、筑波大学の教育プログラムにも精通している。家庭医療専門医常勤5名の体制で総合診療医らしい患者中心の医療を実施しており、患者/家族に寄り添ったケアの実践を学ぶことができる。また、多職種連携にも力を入れており、訪問看護、訪問薬剤師、ケアマネジャーとLINE WORKSなどのICTを活用し、迅速に連絡を取り合い、定期的に多職種カンファレンスを実施しており、地域に密着した多職種連携についても学ぶことができる。

4.感想

今回、70代~90代の患者さん4名の訪問診療に同行した。特に、エレベーターのないマンションの3階に在住している高齢患者さんや、複数のレスパイト入院先があり、在宅看取りか入院か悩んでいる癌末期患者さんのご家族への対応を行った症例は、都会ならではの在宅ケアの難しさを感じた。訪問診療の範囲としては、クリニックから半径5km以内であり、都会の地域としては広い範囲をカバーしているとのことであった。体制としては、常勤医師5名でオンコールを順番に担当しており、日中は、内勤のクラークが臨時往診の依頼を受け、LINE WORKSのチャットでやりとりしており、効率的であった。

また、訪問診療に同行する非医療専門職が医療や介護の知識を学ぶための教育コンテンスを独自に提供しており、地域で質の高いケアを実践するための組織作りにも力を入れていた。電子カルテは、「モバカル」という訪問診療専用のものであり、訪問する日程や医師ごとに患者リストがカレンダーに表示されたり、検査・サマリーのタブが分かりやすく配置されているなど使いやすいものであった。

一番印象的だったことは、「クリニックのモットーは?」と聞いたときに、上田院長が、「地域のお助けマンとして、患者さんから言われなくても、必要なケアを提供できるよう皆で関わっていく」という言葉で、つくばでの学びを活かして、総合診療医らしい診療を展開していることは素晴らしいと感じた。