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令和7年度 包括医療統合教育 講義レポート(東京科学大学)

東京科学大学では医学科5年生の学生を対象に、包括医療統合教育という講義を年8回実施しています。
この講義ではさまざまな立場で活躍する先輩医師の講義を聞き、自身の将来の進路選択に視野を広げ、課題や障壁についても考察することを目的としています。

今回は2025年10月に行われた講義について報告します。

今回の講義は、昨年に引き続き厚生労働省の医系技官として働く先生にお願いしました。
東京医科歯科大学を卒業後、初期研修1年目は当大学病院で、2年目は茨城県内の病院で勤務され、地域での医療が抱える課題に直面したことを契機に、公衆衛生の道に進んだという当大学の先輩医師です。

公衆衛生的視点と医学的知識・経験から、現場と行政の橋渡しとして行われている様々な取り組みについてお話しいただきました。

講義スライドより

講義後に、
「あなたが医療政策の設計や運営に関与する立場を選ぶとした場合、自分ならどのような課題に取り組みたいですか。これまでの臨床実習の経験を踏まえて考えを述べてください。」 
というテーマで提出されたレポートの一部を抜粋して紹介します。

学生レポート

  • 私が医療政策の設計や運営に関与する立場を選ぶとしたら医療へのアクセス格差の是正」に取り組みたいと考えます。 臨床実習を通して、同じ疾患であっても患者さんの生活背景によって治療の継続や予後に大きな差が生じることを実感しました。たとえば、糖尿病や腎不全など慢性疾患の患者さんの中には、経済的理由や家庭の事情により通院が難しく、適切な治療を受けられない方がいました。医療者として患者さん個人に寄り添うことも大切ですが、こうした「構造的な障壁」を政策のレベルで改善することが、より多くの命を救うことにつながると感じました。
     
  • 実習や見学でいろいろな病院を回って、地域や規模でできる医療に差があることを実感しました。もし医療政策に関われるなら、どこにいても安心して治療を受けられるような仕組みづくりをしたいと考えます。特に、病院と地域医療、在宅医療がうまくつながるような制度を考えたいと思います。
     
  • 私は感染症に興味があり、その上で、ワクチン接種などのテーマについては大変興味を持っていました。今回政策に関わる立場の先生のお話を伺うことができ、特に侵襲性肺炎球菌感染症は高齢者において非常に重要な問題であり、肺炎球菌ワクチン以外にも狂犬病などの渡航ワクチン接種を渡航者に対してどのように進めていくかということを検討することが必要であると感じました。自分自身が受ける立場になり、さらに自大学の感染症内科でワクチン外来が始まっていることを踏まえてこのような課題に取り組みたいと思っております。
     
  • 総合診療科で高齢者の患者さんを多く拝見した際に、お薬手帳が実は2冊あったり、様々な病院にかかっていることで検査や薬剤が重複していたりと、医療が一括化されていないことの問題点を先生方から伺う機会が多くありました。訪問診療をされている先生からは、ご本人の管理能力が加齢とともに低下してくることも踏まえて、医療機関同士の連携が必要不可欠であることを詳しく伺った印象があります。既往歴、社会歴等の基本情報や検査結果、内服薬等がより包括的に管理されるようなシステムについてより詳しく調べたり、考えたりしてみたいと感じています。

そのほかにも、医療費の問題や、医師の働き方についてなど様々な課題に関する意見が寄せられました。
学生実習を通して、様々な視点で医療の問題を認識していることが印象的でした。